設計事務所が行う設計業務とは!
設計事務所に建物の設計を依頼する場合以外は、ほとんどが設計施工となります。ハウスメーカーや工務店、建て売り住宅の場合などは工事会社が自社で設計しているとしていますが、実際は下請けの設計事務所(建築確認申請の許可を受けることだけを仕事とする名義貸し設計事務所)に確認申請に必要な最低の枚数の図面を作成させているのがほとんどです。
それは、図面が多いと工事の足かせになったり、下請けの設計事務所に支払う設計料を安くしたいとする施工者側の論理に基づくものです。それがトラブルのもととなっているのです。
建設会社などとは利益関係がない独立した専業の設計事務所のみが直接建築主から依頼を受け、建築主を守るために設計をしており、それ以外はただ確認申請の許可を受けるために設計をしているのです。
構造計算偽装事件を契機に建築士法が改正され、名義貸しの禁止、法令等に違反する行為の指示又は相談にのること、建築士の信用や品位を害する行為の禁止などが条文化されました。
「NPO法人欠陥住宅をつくらない住宅設計者の会」の建築士は、建築主の保護や要望を十分反映することを最優先に設計を行おうとする設計・監理専業の建築士です。また、欠陥住宅の事例を多く調査していますので、欠陥住宅にならないようにきびしい目で設計をおこなっています。
設計図とは!
設計図の作成は、建築主の要望や設計者の設計意図を表現する唯一の方法です。そして、以下の目的のために活用します。
1. 建築主への説明用
設計者が、建築主の要望どおりに設計されているかを説明するために用います。
2. 確認申請用
建築基準法では、建物を建てる前に行政等(民間の機関もある)に法的なチェックを受ける確認申請書の提出を義務づけています。それに添付するために図面が必要です。
3. 見積り用
工事会社は、設計者が書いた図面をもとに見積りを行います。仕上げ材の種類や構造材の寸法、設備機器の品番など詳細かつ十分な図面が作成されていないと、工事会社も詳細な見積りができません。つまり、図面がいい加減だと見積りもいい加減になり、見積りに落ちがあった場合、あとから思わぬ追加工事の請求がきたりと、さまざまなトラブルの原因となります。
4. 工事用
工事現場では、鉄筋の太さや間隔、仕上げ材の種類や詳細な納まりなど、すべて図面を見ながら工事を行います。図面が足りないと工事会社に重要なことが伝わらず、構造や法的な欠陥を生む原因となります。また、重要な事項が記されていないことをいいことに手抜き工事を行う工事会社もあり、十分気をつけなければいけません。私たちが行っている欠陥住宅調査で欠陥がある建物は、図面が10枚以下の場合がほとんどです。欠陥住宅を予防する第一歩は、第三者による工事監理とともに手抜きができない必要かつ十分な図面を作成することが重要です。
5. 契約書用
契約書には、その設計図どおりに工事を行うことを条件に、契約書の一部として設計図を添付しなければなりません。図面が不十分ですと、契約内容が曖昧なものになりかねません。
設計図の種類(木造の場合)
建築基準法に基づく国土交通大臣告示第15号では描く設計図の種類を示しており、適正な見積りや工事を行うためには以下のような設計図が必要です。
1.建築物概要書 | 建物の概要が記してある図面 |
2.仕様書 | 工事範囲、注意事項及び使用する材料のグレードなどが記してある図面 |
3.仕上表 | 建物の外装材や内装材の種類を記した図面 |
4.面積表・求積図 | 建物の面積を求め、表にした図面 |
5.法的計算書 | シックハウス関係や部屋の換気などが基準どおりかチェックした図面 |
6.敷地案内図 | 敷地の位置を記した図面 |
7.配置図 | 敷地内における建物の位置を記した図面 |
8.平面図 | 建物の間取り図(各階) |
9.立面図 | 建物の外観図(各面) |
10.断面図 | 建物を縦方向にカットして、建物の高さや天井の高さなどを記した図面 |
11.矩計図 | 断面図の拡大図で、詳細な高さ寸法や納まり、仕上げ等を記した図面 |
12.平面詳細図 | 平面図の拡大図で、詳細な平面寸法や納まり、仕上げ等を記した図面 |
13.展開図 | 室内の壁面を人が立った状態で見た図面 |
14.天井伏図 | 下から天井を見上げた状態を記した図面 |
15.雑断面詳細図 | 部分的な納まりを詳細に記した図面 |
16.家具図 | 造り付け家具の寸法や仕上げを記した図面 |
17.建具表・キープラン | 外部や内部建具の寸法や仕上げ及び使用金物と、その位置を記した図面 |
18.外構図 | 門や塀の仕上げや、植栽等の建物外部の仕様を記した図面 |
19.構造特記仕様書 | 構造に関する使用材料や仕様などを記した図面 |
20.壁量計算書 | 筋かい等の耐力壁の量や配置が基準どおりかチェックした図面 |
21.基礎伏図 | 基礎の大きさ及び位置、その配筋やアンカーボルトの位置を記した図面 |
22.床伏図 | 床を支える材料の大きさや配置を記した図面 |
23.梁伏図 | 梁や柱の位置及び大きさ、床の下地材の大きさや間隔を記した図面 |
24.小屋伏図 | 屋根を支える材料の大きさや配置を記した図面 |
25.軸組図 | 柱、梁及び筋かいなどを立体的に記した図面 |
26.設備仕様書 | 設備に関する注意事項及び使用する材料のグレードなどが記してある図面 |
27.器具表 | 使用する機器などのメーカーや品番を記した図面 |
28.電気設備平面図 | 照明器具、スイッチ、コンセント及びテレビなどの位置を記した図面 |
29.給排水設備平面図 | 給水管、給湯管及び排水管の経路及び太さを記した図面 |
30.空調設備平面図 | エアコンや換気扇の位置及び配管経路を記した図面 |
以上のような種類があり、木造2階建てでも数十枚の図面が必要となります。