欠陥住宅をつくらない住宅設計者の会

http://www.kekkann.e-arc.jp/

お問い合わせ

隣の建物の解体工事の振動でひび割れ

一級建築士 纐纈 誠

所在地:愛知県内  構造規模:木造(軸組構法)2階建て・56坪  竣工:平成2年

当会の無料電話相談に、「隣にあった建物の解体工事の際に、解体工事で発生した振動によって我が家の外壁にひび割れが発生したので調査して欲しい。」との依頼がありました。

施工者側は、被害があった建物より更に解体建物に近い(敷地境界線上の)ブロック塀でさえ異常がないとの理由により、「解体工事によるものではない」と言って認めませんでした。

調査依頼者は、「以前より多少のひび割れがあったことは認識しているが、解体工事以後本数が増えているようだ。」としていました。したがって、この調査では、ひび割れが発生した時期の確認方法として、ひび割れ内部の色を調査しました。つまり、ひび割れ内部のモルタルの色が原色であれば最近発生したものであり、汚れ等によって変色していれば古いと判断できるからです。

ひび割れは、同じ外壁面でも古いものと新しいものとがはっきり区別できました。また、庇のすぐ上などは、跳ね返った(庇の上に溜まった)埃混じりの雨水がかかるので一番汚れやすいのですが、下の写真のように綺麗なものがありました。更に、この建物にも、モルタルの熱伸縮によるひび割れを、定めた部分にわざと発生させるための誘発目地が設けられておりました。したがって、ひび割れはこの誘発目地やサッシ廻りなどの割れやすい部分に発生すべきなのに、発生箇所が通常ではあり得ない不自然なものがありました。このような状況から、ひび割れは最近発生したものであり、また、このようなひび割れを発生させる原因となるような大きな地震も最近この地域に発生していないことから、隣地建物の解体工事の振動が原因であると結論付けました。

問題は、ひび割れから雨水が浸入して、外壁の下地材又は構造材を腐食させてしまい、外壁の脱落や構造耐力が低下することです。雨水が浸入するひび割れの幅は0.3mm程度以上とされていますが、調査建物のひび割れ幅は下の写真のようにそれを大きく超えていましたので、早急に雨水の浸入を阻止するための補修工事をおこなう必要がありました。

結果は、弁護士さんを通じ、愛知県弁護士会のあっせん仲裁にはかられ、あっせん仲裁に参加した第三者の建築士による現場調査でも「振動によるものである可能性が高い」と認められました。

左:塗装が剥がれた部分のモルタルは真新しい
右:ひび割れの幅は1.55mm