欠陥住宅をつくらない住宅設計者の会

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和解事例報告

一級建築士 森 登

事件名転倒の恐れあるRC造+CB造による3段積み擁壁の、損害賠償事件
平成26年12月愛知弁護士会紛争解決センターに申し立て
平成27年6月名古屋地方裁判所に提訴
原告
代理人
宗教法人、〇〇〇
東海ネット外の弁護士法人
被告
代理人
請負業者〇〇〇 下請け施工業者〇〇〇(工事担当)
弁護士2名
工事内容3段積み擁壁の高さ約3.5m(最高)・長さ約12m、外構フェンス、整地
工事金額2,059,816円
工事場所愛知県〇〇〇市(尾張東部地方)

請求金額6,382,500円 (擁壁やり替え工事費+調査費用+慰謝料+弁護士費用)
調停金額2,902,216円(撤去費用842,400円を含む)
経緯平成24年2月 事前交渉
平成24年3月頭 工事契約(請負契約書・設計図書はナシ)
平成24年4月末 擁壁I期工事完成(RC+CB=2段分)
平成24年7月頭 補修工事(モルタル充填)
平成24年11月中 擁壁II期工事完成(CB+フェンス)
平成25年2月中 補修工事(既存擁壁に鉄板で固定)
平成26年3月中 欠陥住宅をつくらない住宅設計者の会へ電話相談
平成26年6月頃 CBの撤去と土を30度に切り取るよう助言(4頁写真)
症状 平成24年7月の時点で既に傾き、電柱と接触している

平成25年2月に補修を実施したが、傾きは終息しない

緊急避難的に下記のように助言をした(ビニルシートも掛けた)。

宅地造成規制法に抵触する可能性

高さ3.5mの擁壁は、義務擁壁となり、客観的に安全が確認された擁壁にて施行されなければならない。平成24年2月16日(事前交渉)の時点で、原告に義務擁壁の許可申請書に押印を求めている。つまり、義務擁壁にならざるを得ないことを認識していた。

施工途中、隣地の地盤面が道路との兼ね合いで、計画よりも20~30cm下がることになった。一般的には擁壁の高さが増すことになるから、何らかの補強検討を行う。しかし、検討は行われず、擁壁底盤を広げる等の補強もされなかった。結果、単に擁壁の高さが増し、更に根入れも露出した(1頁参照)。「安易に擁壁の高さを高くした」現地調停の際、その事実関係が明確になった。裁判官から「不利側になったにもかかわらず構造はそのままですか〜・・」との発言が有った。

被告側は、1m以下の任意擁壁だから、申請義務は無いし、いちいち構造計算等による安全確認は不要、と主張。ちなみに名古屋市型擁壁を参考にした、とのこと。

原告側は、であれば仮に1mの擁壁とする場合でも、背面土が3.5mあるのだから、配筋・底盤サイズ等、3.5m擁壁の仕様が必要となる(名古屋市型 擁壁の場合)、と主張。

つまり、現在の1段目の擁壁を補強するなでして、3.5m擁壁に改造することは不可能と主張。

造り替えるしか方法が無いことを主張した。

現状の擁壁には転倒の恐れがあり、安全とするには、造り替えるしか方法が無い

被告が提出した、後付けの構造計算書に対する反論

構造一級建築士・浅井さんに応援を求め、再計算にて下記を指摘した。

  • 名古屋市型擁壁の設計に際し、通常用いる地盤の諸条件(仮定条件)を、計算上OKが出るような数字を用いて、計算を行っている。
  • 浅井さんの構造計算では、NGとなった。
  • そもそも3.5mの擁壁高さに対し、底盤幅が1/3の1.2mしかない。 擁壁では基本有り得ないサイズであることを指摘。