欠陥住宅をつくらない住宅設計者の会

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地震に備えた住宅づくり

阪神淡路大震災は、6,434人もの犠牲者がでた大災害です。現在の建築基準法では、「建物の耐用年数中に2~3回発生する中地震(震度5弱=80~100ガル程度*)に対しては建物に損傷を生じさせない程度、また、建物の耐用年数中に1回発生するかもしれない大地震(震度6強=300~400ガル程度)に対しては倒壊や崩壊をしない程度の耐力をめざしています」とされています。このように、建築基準法は最低基準を定めているだけであり、阪神淡路大震災は震度7(最大818ガル)、東日本大震災は仙台市内の観測点で1,808ガルを記録しています。

今回、この東日本大震災がもたらしたのは、津波や原子力発電所の事故で拡散した放射能物質による被害だけではありません。震源地から離れた東京湾岸部などの広域(浦安市など)で液状化現象による地盤被害が発生し、建物が沈下したり傾いたりしています。私たちの住む東海地方も、過去の濃尾地震や東南海地震でも液状化現象があったことが記録されています。東日本大震災と同じように、プレート上の地震である東海、東南海、南海地震は必ず起きると言われています。また、連動して直下型地震や余震も起きるとされています。むかし海だったり池だったり、葦の生えた湿地だったところを埋めて造成した土地が液状化して深刻な被害が出ていたり、海岸近くの造成地は海砂や 浚渫 ヘドロで造成されていることもあり、土地の過去の状況を知ることと、土質を調べることも重要です。液状化も予め地盤改良や杭打ち等の対策を施せば効果的であることも分かってきました。

最近は、建築基準法の想定を超える地震が多く発生しています。建築基準法以上の強度にするのは自己責任なのです。当然ですが費用はかかります。地震によって1階が壊れ多くの犠牲者が出ているのに、自分にだけは降りかからないと思っていませんか? 「いま地震が起きても我が家は安心」と言えるだけの住宅を造りましょう。木造軸組法の場合は、建築基準法の1.5倍から2.0倍の壁量を確保して、筋違い耐力壁を適切にバランスよく配置することにより計画を適切に行うこと。筋違いや柱などの構造部材を金物で適切に接合することです。

震災では倒壊した多くの住宅に腐朽や蟻害が見られ、被害度との強い相互関係があったことが報告されています。防腐・防蟻対策を怠ってはいけません。地盤被害への対策には、より安全性の高い基礎の選択が必要であり、建てる土地がどのような履歴を持った土地なのか知っておく必要があります。建物も住む人と同じように健康管理を怠らず、そのためにも図面の確認、図面と造られる過程の確認、図面の保存をしましょう。安心・安全な住宅を建て快適に暮らすためには、努力が必要です。


*ガルとは加速度の単位。人間や建物に瞬間的にかかる力(揺れ)。数値の大きさが必ずしも地震被害と直結(比例)するものではありません。