「こんなつもりではなかった」「請求金額に納得いかない」。このような相談が後を絶ちません。建築工事を施工会社に依頼する場合、その契約を工事請負契約書という書類によって行うことは、後々のトラブルを回避する上で非常に重要なことです。
工事請負契約書とは、表書き(工期、工事費、支払条件等の記載)、約款(契約条項)、内訳明細書(明細見積書)、設計図書(特記仕様書、図面)をまとめたもので、この書類一式が揃っていることで、工事の内容、範囲、グレード、その工事に対する工事金額を明確にした契約ができることになります。工事費の支払いについては、工事の完成した部分について支払う出来高払いにしてください。また、工事内容の変更によるトラブルも多くありますが、元の契約が曖昧なことから、変更による工事金額の増減が不明確であったり、変更工事に対しての内容や金額を確認した上で契約がされていないことに起因します。
しかしながら、契約書類が揃っていても、契約者の一方である発注者の皆さんが書類の内容を確認し適切であるかどうかの判断をすることは、なかなか難しいものです。
「表書き、約款の内容が発注者にとって不当なものでなく適切なものであるか」「設計図書には希望された工事に対して不足、不備がないか」「内訳書には明細があり設計図書の内容に対して相違なく、また、その金額は適切か」などの確認と判断は専門的な知識を必要とします。契約をすれば、発注者側にも責務が発生します。適正な工事契約を行うためには、事前に建築士など専門家に相談することが賢明な手段と言えます。
ところで、改築・リフォーム工事等の小規模・小額の工事においては、表書きのみ、あるいはそれすらなく口約束で工事を依頼している事例が非常に多いのです。これも大変なリスクを負うことであると言うことは、言うまでもありません。