欠陥住宅をつくらない住宅設計者の会

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火災に強い家のはずが…

一級建築士 櫻井 裕己

所在地:愛知県内  構造規模:木造3階建て

調査物件は「準防火地域」に建つ「木造3階建て」の住宅です。準防火地域内の3階建て以上の建物は2階建て以下に比べ耐火性能の高い建物にしなくてはいけません。しかし本物件はその火災に耐えるための処置がまったくなされていませんでした。

防火地域や準防火地域とは、特に火災の燃え広がりによる大災害を防ぐために市町村等の行政機関が指定する地域で、主に建物や人が密集する市街地やその周辺地域が該当します。そんな地域ですから、建物の耐火性能に関してかなり厳しい規定が建築基準法で定められています。

木造の3階建ては特に厳しく、外壁や屋根の耐火性を高めると共に、内部の柱や梁も燃えにくい材料で完全に覆って鉄骨並の耐火性にしなくてはいけません。内壁や天井や床にも2階建てに比べ使用できる建材やその厚さ等が細かく指定されています。

これらの規定に適合する耐火性の高い建物を、建築基準法ではその程度に応じて「耐火建築物」や「準耐火建築物」と呼んでいます。本物件は木造の準耐火建築物として設計されており、その設計図とおりに建築されるはずでした。

しかし調査の結果、内部において天井が木板張りのみだったり、壁が石膏ボード一枚張りで厚さ不足だったりで、「2階建てなら問題ないのですが…」といった状況でした。仮に火災が起きたとき、特に3階居住者の避難が困難になる恐れがあります。

木造住宅での準耐火建築物は事例も多くなく、現場監督さんや大工さんの中にはその施工に詳しくない方もいると思います。そんな時こそ設計者の現場監理がより重要になってくるのですが、本物件の設計者は、図面だけ描いて現場にはほとんど顔を出さなかったそうです。設計と現場の意思疎通がまったくできていない事により引き起こされた欠陥事案といえます。

現況では建築基準法に適合しておらず違反建築物になりますので、取り壊しもしくは内部施工の全面的なやり直しが必要となります。