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建築士のひと言

-「安全・安心」な家・街づくり- 実践編

平成24年10月22日

一級建築士 滝井 幹夫

前回の「一言」で講座・講演について書きましたが、今回は実践例を紹介致します。

皆さんは名古屋市の「地域ぐるみ耐震化促進支援事業」と言う制度をご存知ですか?その重要性が叫ばれながらも耐震化対策がなかなか進んでいない現状に鑑み、地域の防災意識を高め民間住宅の耐震化を進めるため、町内会などの地域団体が主体となって取り組む地震対策の活動に対して、最大10万円の助成金が支給される制度です。

私はこれに着目し、居住している瑞穂区の某町内の役員に働きかけて実現に漕ぎつけました。その概要は次の通りです。

1. 講演会「東日本大震災を繰り返さない為に ー 安全・安心な家・街づくり」

私が講師を務め、大震災の概要、濃尾平野の成り立ち、地震・台風等の歴史、災害に対する備え(安全に関する情報を知る、各家庭で出来るハード・ソフト面の安全対策)、家具の転倒防止の重要性等をプロジェクターを使って約一時間半お話しし、後の質疑応答は活発でした。参加者は40名近くで、災害に対する住民の関心の高さを実感しました。

2. 防災マップの作成と配布

町内と周辺を含めた地域の詳細な液状化危険度のレベルを色分けした物と、主要地点の標高(海抜)を記入したマップを私が作成し、カラーコピーして全世帯に配布したたところ、自分の家と周囲の状況がよく分かると感想を頂きました。

3. 耐震化と家具の固定を町内に進める訪問活動

名古屋市から紹介を受けた建築士3名と自前で確保の延10名の専門家・ボランティアと町内役員が、数回にわたって町内を訪問し、名古屋市無料耐震診断の申し込み7件と家具の固定申し込み8件を受けました。

 

以上の事業に対して10万円の助成金が支給される見通しで町内から喜ばれていますが、私にはもう一つの意図がありました。

従来の町内会活動はややもすると、上意下達、行政の下請機関のような活動が多く、住民自身の自治組織としての弱点を感じていました。住民の関心が高く実利もある今回の取り組みを通じて、町内活動に対して住民の関心が少しでも深まればと考えました。 1回の取り組みで影響を論ずるのは不遜ですが、今後も地域に対して様々な働きかけを続けようと考えています。