欠陥住宅をつくらない住宅設計者の会

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建築士のひと言

「長く愛される家づくり」

平成25年6月25日

一級建築士 神谷 真吾

このところ、リフォームについての相談、依頼が増えています。家族構成や住まい方の変化、旧式の設備機器や方式の更新や耐震補強等に対応するものです。

リフォームは既存の建物による様々な制約や、「残すものは残して壊すものは壊す」といった、意外と手間や予算もかかることから、「いっそ建替えてしまった方が、てっとり早いのではないか。」と思うことも、正直あります。

先日竣工したリフォームの物件は、もともとは30年前に当方で設計した2世帯住宅ですが、先代の大夫婦が没され、子供さんも独立された、ご夫婦お二人の住まいとなっていました。そこに、息子さん家族の同居を検討することから始まりました。

 

2世帯住宅と言っても、30年前と現在では、同居される皆さんの考え方も違いますし、設計による考え方も多様になっていることから、建替え(全部建替え、一部建替え等)案も検討しましたが、結果リフォームとなった決め手は、「この家が気に入っている。」「庭の眺めを変えたくない。」「あちこちの傷に思い出がいっぱい。」と言った、家族全員の[家への愛着]でした。

その家に関われたことに喜びと、少しですが誇らしくも思い、この先また、新しい家族に[長く愛される家]となるよう、リフォームしようと思いました。

[長く愛される家]は家族の歴史があればこそと思いますが、その舞台となるハードとしての建物を建設するに当たり、設計者、施工者の役割は大きいと考えます。新築、リフォームに関わらず、住まわれる方の将来を思い、見据えた建物を残していくことが、当たり前のことですが出来ているかどうか…。

工事が終わり、引っ越し後生活もひと段落とのことで、お伺いしました。以前は3部屋ある子供部屋やホール等は閑散とし、暗い感じがしたのですが、部屋それぞれにベッドと机が置かれ、子供さん達が書いた絵や、写真が掛けられ、教科書や、おもちゃが無造作にあちこちに、という様子を見た時は、「家が生き返った」と感じる瞬間でした。