欠陥住宅をつくらない住宅設計者の会

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建築士のひと言

「長野県北部地震から思うこと」

平成26年12月6日

一級建築士 寺島 一朗

先月、長野県北部地震がありました。被災された方々には、心からお見舞い申し上げます。

今回の地震では、幸いにして亡くなられた方はありませんでしたが、2011年に発生した東日本大震災の時のことを思い出します。私は、2011年の6月に被災状況の調査に行きました。東日本大震災では、ショッキングな津波の被害や地盤の液状化の被害ばかりがクローズアップされますが、建物の被害はそれだけではありませんでした。

仙台市の山の上にある新興住宅地に建っている某大手ハウスメーカーの住宅では、基礎が壊れていました。このあたりは、丘陵地帯であり地盤も強い地域です。急な斜面に建っているわけでもなく住宅を建てるには問題の無い場所だと思います。住宅の内部では壁に小さなひびが入ったくらいで大きな被害はありませんでした。

しかし、基礎を見ると建物の角々の部分には大きなひび割れがありました。大手のハウスメーカーでは、耐震性のコマーシャルをしていますが、実験台の上に建てられた家を使っての実験では、耐震性の良い結果が出ています。しかし実際の住宅は、地面の上に職人さんが建てています。又、上部の構造体は、ある程度部品として工場で生産していますから、耐震性の品質に差が出ないように思えるのですが、実際に建っている住宅では現場で職人さんが組み立てていますから、いわゆる個人差が出ます。特に基礎は建てる場所によって設計しなくてはならず、造るのも工場での生産は少なく現場での造り方が大きなウエイトを占めます。このメーカーの基礎の図面を見たことがありますが、弱い基礎ではないかと思っていました。実際に地震で壊れてしまった建物を目の当たりにして、大いに勉強になりました。

また、この調査の時に聞いたのですが、地震の発生直後にメ-カーの担当者が来て調査をし、無料で修理をすることがあったようです。地震保険を使わずに修理をするらしいのですが、地震被害の統計からは外れるように思います。あくまでも聞いただけの事なので真相はわかりませんが、こんなこともあったようです。 今回の長野県北部地震で、設計の大切さや現場での監理の重要性を改めて考えさせられたことを思い出す機会となりました。