熊本地震と耐震基準
平成28年6月6日
一級建築士 片山 繁行
新耐震基準という言葉があります。日本の「建築基準法」(以下基準法と略)は、大きな地震が起こるたびに耐震基準が変わっています。「新耐震基準」(以下新耐震と略)という言葉を聞いたことがあると思います。地方自治体から、旧耐震の住宅は、「耐震診断・耐震補強をしましょう。補助金を出しますよ」という事を聞かれたことがあると思います。この旧耐震で建設された建物(住宅)とは、1981年5月以前に確認申請を取った建物のことを言います。工事期間を考えると、1981年の秋口以前に建った建物のことです。だから、新耐震といっても結構古い35年前の建物も、新耐震基準で建築された建物です。
その後、阪神大震災が起きて、鉄骨造と木造についての耐震基準は、2000年に大きな変更がありました。
それでは、一番新しい基準で建築された2000年以降に建った建物の耐震性能はどのくらいあるでしょうか?熊本地震で、どうしてあのようにたくさんの住宅・建物が壊れるのでしょうか?疑問が出てきたと思います。
実は、基準法に問題があるのです。もともと基準法では、震度6強とか7の場合には、大破してもよいから「グシャ」(中にいる人間が、逃げる暇もないほど急に壊れる)とつぶれない程度の耐震基準なのです。そのため、一番新しい基準法通りであっても、繰り返し大きな地震が起こった場合は、壊れると言う事なのです。つまり、本震で耐震性能がほとんどなくなっているため、今回のように「震度7」が2回もあり、余震で6強が何回もあるような地震に対しては、壊れてあたりまえなのです。
それでは、地震に強い住宅・建物はどうしたら作れるでしょうか?2000年に、住宅の品質確保の促進に関する法律(品確法)、2009年には長期優良住宅制度が作られました。これらの法律では、基準法の「1.25倍」「1.5倍」の強度(基準)を想定しています。「1.5倍」の耐震強度の場合、大地震でも軽度の壊れ方と考えられています。つまり、繰り返し地震に対して、耐えられるという事です。また、住宅では、「免振」は費用が掛かりすぎて作りにくいですが、「制振」なら、50万円から100万円程度の予算で、建築できます。
こうした、現行基準法の基準強度より「1.5倍」「制振」という事を考えて、これからの住宅・建物を考える必要を改めて教えてくれた「熊本地震」です。