ブロックの擁壁の怖さ
平成28年6月11日
一級建築士 纐纈 誠
建築用空洞コンクリートブロック(以下、単に「ブロック」といいます。)で造られた擁壁(ようへき)を見かけますが、非常に危険なもので、地震などで崩壊している様子もよく見ます。ここではブロック積みの擁壁について考えます。
1、ブロックによる擁壁への注意喚起
(社)全国建築コンクリートブロック工業会のホームページでは、Q&Aで「高さが1mもある土留めは、空洞ブロックでは後ろの土の重量などを支えるだけの必要な強さ(必要な鉄筋の配筋など)が発揮できません。鉄筋コンクリート造など、他の構工法を考えてください。」として、注意を促しています。
建築雑誌「日経アーキテクチャー」の2004年7月号では、不適格擁壁の特集をして、高さ2m以下に多い手抜き工事として「擁壁を塀と誤解している。」という記事を掲載しています。これは、塀の材料としては認められているブロックを、材料として認められていない擁壁として使用することは間違いで、手抜き工事であるとしているのです。
国土交通省でも、ブロックを用いた擁壁には気を付けるように呼びかけています。
2、法規制とその問題点
建築基準法では、高さが2mを超える擁壁は工作物として扱い、行政又は民間確認検査機関に建築確認申請を提出して確認を受けなければ工事ができないと規定されています。
宅地造成等規制法では、宅地造成工事規制区域内で1m以上の盛土又は2m以上の切土をおこなう造成工事をおこなう場合、宅地造成に関する工事の許可を得なければならないとしています。また、「1m以上のがけには擁壁を設置し、これらの崖面を覆うこと。」とされています。
しかし、2m以下(宅地造成等規制法では1m以下)の擁壁は申請等の義務がないので、誰にも審査されることがなく、勝手に法を無視した危険な工事がおこなわれているのが実情です。また、「申請等の義務がない工事はどのような材料を用いても問題ない。」などと、間違った認識をしている業者があることも問題を多くしている一要因としてあります。
3、擁壁の材料
建築基準法でも、宅地造成等規制法でも、擁壁の材料は「鉄筋コンクリート造、無筋コンクリート造又は間知石練積み造その他の練積み造のものとすること。」とされています。
当然のことですが、申請の必要性の有無に関わらず、認められた材料・工法以外で造れば強度・耐久性の観点から危険であることは明白です。
そもそも、ブロックは水を通しやすい材料です。常時雨水にさらされると水が中に入っている鉄筋が錆びやすくなります。したがって、塀の材料として用いる場合でも、コンクリートの基礎を地盤面から5cm以上立ち上げてブロックが水に接触しないようにしなければなりません。それが常に水を含む土と接する擁壁ならば危険なのは当然です。
ちなみに、日本建築学会の建築工事標準仕様書では、C種の防水ブロック又は型枠ブロックを用いた場合に限り、2段(40cm)までの擁壁を認めています。
4、ブロックの種類
ブロックには普通ブロック、防水ブロック及び型枠ブロックがあります。普通ブロックには圧縮強度ごとにA種(8N)、B種(12N)及びC種(16N)があり、防水ブロックはC種の一種のみにあります。型枠ブロックは鉄筋コンクリート造の型枠代わりとして用いられるもので、CP型枠ブロックを用いた鉄筋コンクリート造擁壁は国土交通大臣の認定を受けており、基準どおりに造れば擁壁として築造可能です。