欠陥住宅をつくらない住宅設計者の会

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建築士のひと言

何かおかしい

平成28年12月29日

一級建築士 井上 邦克

 私は建築設計事務所を創業して42年になります。
 建築学を十分に学ぶこともなく、知識も乏しい中、実務経験を中心に自己流で今日まで来ました。
 有名建築家と称する人達の話題性ある数々の作品?の中に創造性をかき立て将来日本の資産や財産となり得る物件はどれほどあるのでしょうか。実際にその建物を利用する人々や、長期間に渡って維持管理する関係者の事を考えると疑問を持たざるを得ない物件は多数あると思います。
 私は日頃建物は、今回住宅に限って申し上げれば多くの施主は融資を受けて建てる方が多いと思います。この人たちがローンを長期に渡って幸せな気持ちで返済してもらう事を考えた時、外部廻りについては、20年は当たり前、出来れば30年くらいはノーメンテナンスを目標にした家造りでなければならないと考えております。(経済活動の観点から疑問を呈する方もいるかも知れませんが)現在法で規制される1年、2年、10年間等の保証期間は業者の保身の為の制度としか思えません。最低の最低の最低以下の基準だと認識する必要があると思います。

 ここ最近の住宅を見ていると憂欝になってきます。以下は私が常々考えている持論です。皆様方に失礼となる記述があればお許しを、またご意見を戴ければ幸いです。

 施主の全く知らない(理解出来ない)うちに、要望もしないうちに、施主への丁寧な説明がなされているとは思えないうちに、ストレスの溜る不健全な住みづらい家が、おかしな家が次々と建てられていると思われて仕方ありません。
 今まさに弊室の近くで昔からの地元民は誰も住もうとしなかった水路脇の低地で軟弱地盤の土地に一夜にして造成を行いすぐ建てられる家。周辺環境が良好にも拘らず東面や南面に意匠を重視したとしか思えない縦長や横長の細い窓(ガラス拭きや物の出し入れが心配になる)、さらには南、東面を塞ぎトップライトで採光を確保するような無理な納りの息の詰りそうな家。本来ならば高温多湿の気候風土の地では、夏を旨として南面、東面に大きな開口部を設け通風採光を十分取ることが当然であったはずなのに冷暖房に頼らなければならない家。家相を無視したような不自然な間取りの家。我々プロの建築設計者であれば外観を見るだけで凡そ間取りは分るし納まりが悪く将来支障の出そうな箇所もわかります。こんな家には住みたくないと思いながら仕事をしている職人の造った家。営業マン自身は購入しないが他人には売りつける住宅メーカーの家。さらに続けます。
 佛間等の敬う空間の全くない家。西向きに台所のある家。内装の下地に胴縁の無い家。道路から玄関までの動線の悪い家。寝室から寝いびきの音や、入浴時の会話や音の漏れる家(私が夜遅く欠陥住宅をつくらない住宅設計者の会の会合からの帰り、最寄り駅から徒歩での帰宅途中北側の道路を通ると聞こえてくる家が複数軒あります、住人が気づいているかどうか気がかりです。管理も出来そうにない2階屋根上の太陽光パネルを設置した家。手摺をつけると物が運びづらい狭い幅の廊下や階段のある家。引戸の戸当り面に枠材が無く直にボードやクロス面に建具が当たる納まりの、意匠を重視したような家。トタン屋根のバラック建築にしか見えない家。外壁廻りの断熱性能が悪く冬期に下地の間柱等のラインが浮き出る家。腕の良い大工さん、左官さん、瓦葺き職人さん等の技量を生かしきれないいいかげんな納まりの家。
 住宅メーカーで多く行われている施主を囲い込むような中途半端な状態での契約の仕方や業者寄りの支払い条件の家。等々・・・・・
 おかしな事が沢山あります。

 しかしこれらにも全て建築士が係わっているはずです。今一度基準法や士法のそれぞれの第一条目的を読み直す機会です。
 ここで今必要とされるのが心ある建築士(例えば欠陥住宅をつくらない住宅設計者の会の会員)の存在です。以上述べた憂欝になる数々の事例は、心ある建築士に依頼すれば一挙にしかも簡単に解決出来るはずです。
 しかしながら、残念な事に我々の会が社会に広く認知されていない事が最大の問題です。

 技術や文化の伝承の出来る職人さんが淘汰され、おかしな家づくりに励むハウスメーカーが生き残れるような行政からの細か過ぎる数値だけ求める規制基準には大きな疑問を感じます。極力規制は減らし、心ある建築士に責任を持たせ設計監理を自由にさせるべきです。最終的に、これが究極のエコや耐震住宅となり日本の財産や資産になるはずです。

 今回はこれまで。