中古住宅のススメ
平成29年12月23日
一級建築士 櫻井 裕己
■空き家が増えています
唐突ですが今の日本、住宅があまっています。国土交通省の平成25年調査では、一戸建と共同住宅あわせて7~8軒に1軒は空き家であるという報告がなされています。
こうした空き家は中古住宅として流通すればいいのですが、同じ国土交通省の報告によると、流通する中古住宅数は年間17万戸と年間新築着工数の1/5程度だそうです。中古住宅はやはり耐震性や劣化度合いや機能劣化などの品質面で不安な部分もあり、あまり需要がないのでしょう。ただこのままでは今後も空き家は増えていくばかりで、資源の無駄使い、地域の荒廃化などの問題が取り沙汰されています。
そこで国はこれまでの造っては壊すという住宅政策の見直しを行い、長く使え、中古物件としての良質なストックとなるよう、長期優良住宅制度などを設けて耐震性強化や劣化低減、維持管理のしやすさに配慮した設計施工を指南しています。
今後は中古住宅といえども適正価格で良質な物件が増えることが期待されます。
■良質な中古住宅を購入するには
では、実際中古住宅を購入するとなった場合、その良質な中古住宅を見極めるにはどうしらいいのでしょうか?
中古住宅への要望は人それぞれ違いますが、施工不備や雨漏りや程度の大きな劣化がないなど、購入後にも問題なく快適に生活ができる状態をなるべく多く保持している事が、良質な中古住宅としての必要条件かと思います。しかし、それら条件を建築について専門でない買主が、購入前内覧の僅かな時間で見極めるのはかなり難しい事です。
そこで中古住宅購入で失敗しないためにも、第三者的立場の建築士や施工業者、不動産業者による調査立会いを推奨する動きが活発になっています。また調査員によって調査方法や判断基準にばらつきがない様、国土交通省によりガイドラインや告示が示され、これらのガイドライン等に基づいた講習の履修・登録者である調査員が多くなってきています。最近は調査や査定を意味する「インスペクション」という用語から「ホームインスペクター」や「登録インスペクター」と称した調査員が活動する場面を多く見かけます。さらに「既存住宅状況調査技術者」と言って、建築士限定の中古住宅調査講習を修了した調査員もいます。中古住宅購入の際には、是非これら専門的調査員の活用をお考えください。
■ご注意
ただし気をつけていただきたい事があります。この国土交通省がガイドラインや告示で示す項目は最低限度の内容であり、基本的に調査方法は、床下にもぐったり、屋根に昇ったりせず無理しない範囲での目視のみとされています。ですからこれらに基づく調査や報告がなされたからといって良質な中古住宅として「お墨付き」を付与されるものではありません。
また調査依頼者(買主)によっては、増改築のしやすさ、耐震性の程度、現行法規適合性、公共インフラの整備状況など、中古住宅に求める要望も多種多様と考えられますが、ガイドラインや告示ではこれらは調査項目には入っていません。
何を中古住宅購入の決め手とするのか、事前に調査員としっかり相談しておくのも、良質な中古住宅を購入する近道となることでしょう。
以上